忘れ物の後輩

僕と仲の良い後輩の彩花が、ある日大学からの帰り道、いつものように電車で帰っていた。ある日、いつものように電車で帰ろうとした時、後からやってきた友人から「彩花、ちょっと待って!」と声をかけられ、電車に乗車する前に一息ついていたそうだ。 彼女を見ていた友人は、その瞬間、彼女にいつもあるはずの少しだけ壊れたイヤホンがないことに気づき、疑い始めた。後輩は、頻繁に壊れたイヤホンを直してくれると言われていたが、どこかでそれをなくしてしまい、また修理しなければならないだろう、と考えたのだ。 友人は、真っ赤になるほど顔色が悪い彩花に尋ねた。「彩花、大丈夫?最近何かあったの?」 彩花は、ため息を吐いて答えた。「私が一番怖いのは、このイヤホンをなくしてしまうこと」 友人は、彩花を連れて近くの公園へと向かった。そこで、彼女と話をする中で、いつも使っていたイヤホンをなくしたのは、忘れ物のために、いつもより早く電車に乗った、と打ち明けたのだ。彩花は、そのイヤホンが、彼女にとってとても大切なものであったことも明かした。それは彼女が子供の頃から母親からもらったもので、今まで大切にしてきたものだったのだ。 友人は、彩花がどれだけ大切なイヤホンをなくしたことに対して、辛い思いをしているのかわかると思い、彼女を励ました。「大丈夫だよ、彩花。一緒に探そう、きっと見つかってもう。」 友人は、彩花と一緒に公園を歩き、落ちているイヤホンを探した。しかし、いくら探しても見つかることはなかった。 それから、数日後、彩花は公園のベンチに座って、イヤホンを探し続けることに疲れていた。いつもより表情が曇っており、友人は心配していた。ある時、彩花は突然言葉を吐き出した。「このイヤホンが、私を怖がらせている…」 彩花は、話を進めながらボワンボワンと震える声で言った 「このイヤホンが見つからなかったから…私は…誰かをやめられないんだ…」 友人は、不吉な噂を聞いたことを覚えている。以前、この公園で人を見つけても、常にその人のことを無視していた、と噂されていたから... 友人が彩花の手を握ると、彼女は突然泣き始めた。「私の存在が怖くて…私達は誰も…誰とも…対話できない…」 その言葉を残して、彩花は消えてしまった。 友人は、静まり返った公園の中で、彩花の声が残響するかのように耳に残っていることを恐れて、後ずさりした。誰も聞いてもいないように、ささやかな祈りを捧げて、彩花を見守ることを決意したのだ。そう決めた瞬間、遠くから聞こえてきたかすれた音を聞いて、一変した。 それは、いつも彩花がつけていたイヤホンの音だった。 友人は、空虚な公園をさまよう途中、遠くから音が聞こえる度に振り返り、その音に焦がさなければ気が済まないことを知った。

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