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古びたアンティーク店で見つけた鏡。深い淵のように黒いガラスはまるで吸い込まれそうになり、その縁には薄っすらと赤い血のような跡がついていた。店主から「なかなか不思議な鏡だね、見る人を不幸にすると言われることもあるんだ」と告げられたものの、私はその言葉を気にせず鏡を購入した。家に持ち帰り、鏡の表面に私の顔を映そうと触れたその時、鏡の中の私は別人だった。真っ白な肌に深紅の瞳、口には不気味な微笑みが浮かんでいる。その瞳は私を見据え、小さくため息を吐いた。 「あなたはもう、私のものでしよう」 呟きと共に鏡の中に映った私は消え、鏡面は再び私の姿を見せ始めた。しかし、どこか違う、疲れた瞳と頬の隈が明らかに増していた。それから、不思議なことが起こり始めた。私の周りには何か冷たいものが常に漂っているような気配がするようになった。そして、夢の中で何度も、鏡の中に映った赤い瞳と不気味な微笑みを目にするようになった。夢は現実界と重なり、私は次第に自分の行動や感情を失い始めていた。鏡の中の人物に操られ、私の人生は狂っていく一方だった。鏡を遠ざけないと私にとり戻せなくなってしまうかもしれない。考えただけで寒気が走る。鏡を叩き割ろうと手を伸ばすものの、その手は固く縛られているように感じた。鏡の中からかすかに声が聞こえた。 「また、君はその手に私の力を握るのか?」 私は振り返った、背後には鏡の映り込みを見ていた。 しかし、そこにはもう自分の姿は映っていなかった。代わりに赤い瞳と血のような微笑みが私を見つめている。私の身体は遂に鏡の世界に引き込まれていった。「そして、私のすべてを…手に入れて……!」最後の言葉と共に、真っ暗な闇に包まれた。
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