歪んだ鏡

山荘に滞在していた私たちは、好奇心に突き動かされて古い鏡の入った部屋を見つけ出した。その鏡は巨大で、厚い黒檀の枠に囲まれていた。しかし、どこか不自然な歪みが鏡面全体に広がり、像が正常に映し出されていない。誰かが覗き込んでも、顔は歪んで恐怖に満ちたものに変化する。怖いからといって近づかないようにという警告も忘れ、私たちは興味心に邪魔され、一人ずつ鏡の中に自分の姿を映し出した。 その瞬間、鏡の中から、歪んだ笑顔で私達の姿を見つめる人影が現れはじめた。人影はゆっくりと鏡の中から這い出し、私たちの前に立って見下ろした。その顔は、私たちのものとは酷似していたが、それが私たち自身の姿だけでなく、まるで憎しみと支配欲に満ちた悪意に歪められた自分自身だった。鏡の中の姿は、私達の恐怖を嘲笑うように、笑い始めた。我々は抵抗しようとしたが、その笑い声は我々の心を蝕み、恐怖で自由を失った。人影は暗い力を込めた手をつき、私達を鏡に引き込もうとした。私は必死に逃げ出し、他の者はまだ彼らに取り憑かれ、歪んだ笑顔で我々を苦視しているのが見えた。山荘を後にした私は、鏡の姿を忘れられない。あの歪んだ鏡は、私達の中に潜む闇を映し出す存在であり、決して忘れてはいけない恐怖の象徴だと考えざるを得なかった。