忘れられた人形

田舎の古い家に引っ越したばかりのアパートオーナー、山田先生は、物置の中に奇妙な人形を見つけました。お人形は、一口サイズほどの小さな体で、真っ白い布地が体に張り付けられており、精巧に縫い付けられた黒い目が不気味さを増していました。手が縫い終わりに少しだけ伸びているように見え、まるで小さな人形でさえも不安を感じているかのように。 山田先生は人形を試すと、その目からのぞく黒い点は、まるで光を吸収しているかのように小さく光り始めます。不思議な経験に少々躊躇したものの、廃墟と化しているアパートの寂しさを紛らわせる癒しになればと思い、玄関先に飾ることにしました。 しかし、夜になるとアパートは不気味な雰囲気に包まれ、その小さな人形の目が山田先生の部屋に光り始めたのです。目が光り始めた時、部屋の温度がみるみる下がり、まるで誰かが冷たく息づいているような感覚に襲われるのでした。 山田先生は次第に不安を感じ始めました。夢の中で自分が長い髪の女の子に抱きしめられ、顔が人形のように歪んでいる夢を見るようになりました。目が覚めると、手足の冷えが続き、人形の黒い目が彼をじっと見つめているように感じました。 それから数日後、山田先生は床に散らばる小さな布片を発見します。それは、人形の洋服でした。そして、人形を玄関先に飾り捨てた時は、小さな黒点の光がゆっくりと消えていくのを見ました。 山田先生は森へと歩き去っていきましたが、忘れられない不気味さの中で、小さな人形の黒い目が、彼を見つめているように感じました。

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