陽だまりの廃墟

海岸沿いにある古い遊園地だった。今では朽ち果て、錆びた遊具が不気味な影を落としながらひっそりと佇んでいた。ある日、僕は廃墟へと迷い込んだ。陽光が木々から差し込み、埃が舞う中、ほすざわしい風に乗って、かすかに遊園地の音楽が聞こえたような気がした。少し先の影から、小さな女の子の声が聞こえ始めた。「もう、Nobody が遊んでくれない・・・」僕の心臓は激しく動き出した。誰だ?誰もいないはずの廃墟に。ゆっくり声を出してみた。「誰?」静寂が僕を包み込んだ。心拍音が聞こえるほどの静けさだ。「Sorry. Nobody is here...」。再び、小さな女の子の声が響いた。それはどこか悲しみに満ちた声だった。近くの自動時計台へ向かうと、クロックの針は止まったままだった。僕は時計台に手を伸ばし、少し動かしてみた。すると、また声が聞こえた。今度は、楽しげな子供たちの声が。「うわー、Merry-go-round 動く!見てみて!」時計台が動いた瞬間、空気が冷たくなり、子供の笑い声は不気味なほどの歪んだ音に変わって行った。遊具の影がぐらぐらと揺れ始めた。僕は、頭の中を冷や汗が流れた。何を見たのか、何を感じたのか、今でもはっきり覚えていない。次の瞬間、僕は目の前の光に包まれ、目を覚ました時には、もう廃墟からは離れていた。影から消える、子どもの視線が、僕の胸に残っている。

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