赤い靴の少女

月夜に煌めく霧が濃く立ち込める田舎道を一人歩いていると、遠くから小さな音が聞こえてきた。近づいてくると、それは女の子の歌声だった。かすれた声でどこか悲しげなメロディーを歌い、小さな赤い靴の上を軽やかに跳ね跳ね、歌声はどこまでも続く田舎道をさまよってゆく、その様子は不気味にも美しい。 私は好奇心に駆られて、声を呼ぶと女の子は視界に入った。真っ白いドレスを着て、赤い靴を履き、長い黒髪は肩まで垂れ込んでいる。しかし、その顔は深く影に隠されており、影の中からは恐怖の目が覗いていた。 私は恐る恐る女の子に声をかけてみた。「どうして一人でここにいるの？」 彼女は静かに歌を止め、顔をわずかに歪ませた。「お家へ帰れないんだ...」「どこから来たの？」 女の子は唇を裂き、低い声が響いた。「どこにもないところから...」 その瞬間、霧が濃く立ち込めるそして街の外れにある古い井戸が見えるまで迫った。女の子は井戸の隣に立ち、私のほうを向いて微笑んだ。「おいで...一緒に歌おう...」。 夜の霧に包まれて、彼女の心の奥底に潜む恐怖を感じる。赤く染まる彼女の靴はゆっくりと井戸へと近づいていった。私は声を出し、走り去る。振り返る事を恐れたが、彼女の笑い声が今でも耳に残っている。