消えた記憶

俺は大学生の頃、古びた山門の先に建つ廃墟となった寺に誘導された。友人達の好奇心に応え、懐中電灯を頼りに寺の中へ足を踏み入れた。漆喰が剥離し、蜘蛛の巣で繋がれた通路を進むうち、不気味な静寂と冷気が入り込んでくるのを感じた。奥へ進むと、長い廊下と部屋と繋がる巨大な襖があった。襖に描かれた絵柄は鮮明だった。でも、そこには奇妙な空白があった。絵柄が途切れるあたり、まるで何かが消されてるのを感じた。 僕らは恐怖感に駆られながら襖を開いた。部屋の中は薄暗く、ほこりが舞っていた。柱は苔むし、天井は崩れかけていることもちらっと見える。床には古い机と椅子が置かれており、埃をかぶった本が置かれていた。俺は机に並んでいた本を手に取り、表紙を開いた。 その瞬間、僕は激しい吐き気を覚え、眼前が真っ黒になった。 気が付いたら、俺は自分の部屋にいた。ベッドに横たわり、布団が被っている。窓の外には柔らかな朝陽が差し込んでいる。 僕が気づいたのは自分の手が震えていることだった。夢か何だったのかわからないけど、あの寺の記憶は曖昧なまま。僕はもう一度寺について調べてみた。でも、インターネット上の情報にはそれらの寺の図面も見つけることができなかった。まるで存在自体が消されてしまったかのような謎を残していた。

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