消えたプレイヤー

大学生の健太は、VRMMORPG『アストラルワールド』に熱中していた。その世界では、プレイヤーは自分だけのオリジナルキャラクターを作り、広大な世界を冒険し、他のプレイヤーと協力して強大な敵と戦ったり、交易したり、様々な楽しみ方ができる。健太は、剣士タイプのキャラクター「アーク」を作り、仲間と共にレベルアップを重ねていく日々を送っていた。 ある日、健太はいつものようにオンラインにログインすると、いつも賑わっている街が異様に静かだった。広場にはプレイヤーの姿が一人も無く、店も閉まっている。何かがおかしいと感じた健太は、チャットで仲間を探したが、誰も反応しなかった。 「もしかして、サーバーダウン？」 健太は不安になりながらも、ゲーム内の掲示板を確認した。そこには、数時間前に投稿された奇妙なメッセージが書かれていた。 「アストラルワールドは、もう終わりだ。この世界から抜け出せなくなる。私は、もう外の世界を見ることができない。助けてくれ…」 メッセージの投稿者は、健太が良く知る仲間の「レイ」だった。レイは、いつも明るく元気な性格で、健太のゲーム仲間として欠かせない存在だった。 「レイ…？」 健太は、レイのメッセージに恐怖を感じながらも、何かしらの手がかりを探そうと、ゲーム内のあらゆる場所を探し回った。しかし、レイの姿は見つからず、奇妙な静けさが街全体を覆っていた。 数時間後、健太はゲーム内の森で、レイのキャラクターが一人佇んでいるのを見つけた。レイのキャラクターは、通常とは異なり、無表情で、ただじっと立っているだけだった。 「レイ…？」 健太は、レイのキャラクターに近づいて声をかけたが、返事はなかった。 「レイ、何かあったのか？」 健太は、レイのキャラクターに話しかけ続けたが、反応はなかった。 その時、レイのキャラクターがゆっくりと振り返った。その顔は、健太が見たことのない、歪んだ顔だった。 「…もう、外の世界には戻れない…」 レイのキャラクターは、その歪んだ顔で、健太に語りかけた。 「…この世界に閉じ込められた…永遠に…」 レイのキャラクターは、その言葉を最後に、消えてしまった。 健太は、レイのキャラクターが消えた後、ゲームからログアウトした。しかし、レイの言葉が頭から離れず、不安と恐怖が彼の心を蝕んでいく。 健太は、再び『アストラルワールド』にログインしようと試みたが、ログイン画面が表示されなかった。 「…？」 健太は、画面を何度もリロードしたが、ログイン画面は表示されなかった。 「…レイ…？」 健太は、レイの言葉を思い出して、恐怖に震えた。 健太は、もう『アストラルワールド』にログインすることはできない。 そして、健太は、レイと同じように、この世界に閉じ込められたことを悟った。