呪いのビデオテープ

古びたビデオデッキが埃をかぶって静かに佇んでいた。その隣には、ラベルが剥がれ、テープの表面に傷が刻まれたVHSテープが置かれていた。そのテープは、私の叔父が遺したもので、彼が旅先で手に入れたという奇妙なビデオだった。叔父は、そのテープを「絶対に再生すべきではない」と遺言していた。 彼の言葉は、好奇心を刺激する呪文のように響いた。私は、叔父の遺志を継ぎ、そのテープを再生することに決めた。 デッキの電源を入れ、テープをセットすると、画面にノイズが入り乱れる映像が映し出された。映像は、荒れた海辺の風景から始まった。波が激しく打ち寄せ、黒い雲が空を覆い尽くす。画面には、奇妙な儀式が行われている様子が映し出され、人々は奇妙な歌を歌いながら、何かを捧げている。 映像は、徐々にグロテスクな方向へ転じていった。人々は狂気に満ちて、血まみれの儀式を執り行う。画面には、血と肉が渦巻く、恐ろしい光景が映し出された。私は、恐怖に震えながら、目を背けたくなる衝動に駆られた。 しかし、私はその映像から目を離せなかった。映像は、私の叔父がそのビデオを手に入れた場所、そして彼がそのビデオを見た直後に起こった出来事まで、詳細に描かれていた。叔父は、そのビデオを見た後、精神的に崩壊し、奇妙な行動をとるようになった。そして、最終的には、自ら命を絶ってしまった。 映像は、突然途切れた。画面には、ノイズが入り乱れるだけの黒画面が広がっていた。私は、息を呑みながら、ビデオデッキからテープを取り出した。 その瞬間、部屋の温度が激しく下がり、冷たい風が吹き始めた。壁に影が踊り、私の背後から何かが近づいてくるような感覚がした。私は、恐怖で全身が震え、逃げ出したくなった。 しかし、私はその場から動けなかった。私の視界に、映像の中に映っていた人々の狂った顔が浮かび上がり、私の耳には、彼らの奇妙な歌声がこだまする。 私は、叔父の遺言を無視したことを後悔した。私は、そのビデオテープに呪いをかけていると確信した。そして、その呪いは、私を襲い掛かってくるのを感じた。 私は、そのビデオテープを処分しようと考えたが、そのテープは、私の手から離れなかった。それは、私の体の一部のように感じられた。 私は、そのビデオテープに支配されていることを悟った。私は、その呪いから逃れることはできない。私は、そのビデオテープと共に、永遠にその狂気に囚われていく運命にあるのだと。

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