廃墟病院の沈黙

深い霧に包まれた坂道を昇り切った先の廃墟となった病院。朽ち果てた建物は、見上げればどこまでも続いていく長い廊下に繋がり、かつては人々の命を支えていたはずの医療機器は、不気味な影を落としながら埃にまみれていた。病院の入口には、かつて受付で働いたのかもしれない老練な感じの女性の写真が一枚残されていた。彼女は薄気味悪い微笑みを浮かべており、見つめれば時間が止まるような不気味な目に包まれる。少し奥へと続く診察室に至ると、壁に掛けられた病院紹介の絵は、何者かの手で怒りを込めて落書きにされ、医師と書かれた文字が墨で消されてしまっていた。異様な重苦しさの中、そっと廊下の奥へ足を踏み入れると、突然、遠くからかすれた笑い声が聞こえてきた。血ェが止まりにくい病人だと悪態つける声と、それが消えるときのと同時に、急いで足を踏み締め、古いベッドから落ちてしまった音が、心をつましく揺さぶる。静寂が襲ってきて、息を呑むような緊張感が体を支配する。 気配を察しても相手は現れない。 廃墟病院は、かつての人々が抱いた恐怖を如実に映し出しているかのようだった。静かで遠い過去の出来事の影が、ここに残されていた。誰もいないはずのこの場所で、何かが待ち構えているかの気がして、もう二度とここにも立ち戻りたくないという強い願いが心に浮かんだ。

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