顔のない電話相談

都心の雑踏に離れた古びたアパートで一人暮らしをしていた私は、ある日奇妙な電話をもらった。知らない番号からの着信だった。 「こんにちは。顔のない相談窓口です。」 静かなの声に私は驚きを隠せなかった。「顔のない相談窓口とは…?」 「悩みを抱えているなら、あなたの顔を見ずに話を聞いてあげます。匿名で相談できますよ。」 怪しいとも思いつつ、気になっていることがあったので、話を聞いてもらうことにした。まずは自分の話を丁寧に打ち明けた。すると、電話の向こう側は少し考えてから、意外な答えを返してきた。 「あなたの話は、すでに私たちには知られています。」 心の奥底でゾッとした。私は泣きそうになりながらも、なぜそう言われるのか、聞いた。すると電話の先からゆっくりと語り始めた。 「あなたは、ここで過去にこの窓口に相談した人が、実はあなたが未来からやってきたことを、この口唇で先に断片的に話していたのです。」 声が歪んでいるように感じられた。私の脳裏には、この電話に出る前に見た奇妙な夢がフラッシュバックした。そこでは、私は自分自身の口を手で塞ぎ、何かを必死に言おうとしたが、それ以上詳しくは覚えていなかった。 「…そうか…」 私はうす暗い部屋に佇み、震えていた。この電話が、未来からの自分自身の警告なのか、それともただの悪夢から抜け出せない現実なのか、解明できない不安感が我々を締め付ける。 「私たちはあなたの未来を見守っています。」 電話が切れた。静寂のみが残る部屋に、冷たい風が吹き抜けていった。

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