血の鏡

京都の老舗旅館に、ふとした縁から宿泊することになった私は、一際趣のある部屋に案内された。部屋の落ち着いた雰囲気に惹きつけられると、古い鏡が目につく。その鏡は少々傷つき、フレームには花弁のようなデザインが彫られていた。何とも不思議なたたずまいで、つい目を惹きつけっぱなしになる。 その夜、眠りにつく前に私は鏡を再び見つめた。すると、自分の顔が映る代わりに、血まみれになる女性の顔が存在していた。それは、まるで自分と同じ姿をしたものだ。怖くなって部屋からしばらく出られなかったが、次の日以降、その鏡だけ見れば再び血まみれの女だった。 旅館の女将に話を聞くと、あの鏡に伝わる呪いは、これまでにも何度も人に恐怖を与えてきたと言われた。鏡の奥には、長い年月をかけて憤怒し続けている女性の怨霊が閉じ込められているという。 自分は呪いに見舞われたのかもしれない。恐怖で身がすくんだ私は、再び鏡の視線の先を見つめた。すると、鏡の中の女は微笑み、私に囁いた。『あなたも…私に join なれば…?'そう聞かれた瞬間、床に映る自分の姿が揺らいだ。あっという間に、血まみれになり、鏡の中の女と同じ顔になった。そして、鏡に映る消えない微笑みと、響く女の声が、私の耳元で断末魔のように繰り返された。 'JOIN…JOIN…'

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