消えたピアノの旋律

古い町並みの奥深く、古びた洋館が佇んでいた。そこはかつて有名なピアニストが住んでいたという話が残る場所だ。建物の庭には、苔むしたままクラシック調のピアノが置かれている。誰もがその独特の美しさに魅了されるが、肝心のパルには誰もが恐怖を感じるのだ。 夜になると、風が吹くたびにピアノから切なく紡がれるメロディーが漂い始める。まるで誰かが静かに鍵を奏でているようだが、部屋の中は誰もいなく、鍵盤は動く様子もない。その曲は、一見哀愁ただよう旋律だが、聴いていると徐々に心が締め付けられるような、不安にさせられるものだった。 好奇心でその楽譜を見つけようと、ある音楽大学の教授が洋館に接近した。彼はそのメロディーに何かと特別な意味を見出し、楽譜の行方を探そうと考えていた。しかし、教授はその老朽化した建造物に入った瞬間、急に心が凍り付いた。 階段がきしむ音と共に、誰かが薄暗い部屋の中から彼を見つめているような気がしたのだ。教授は焦りを感じ、急いでピアノの前にたどり着いた。そこには、ピアノの鍵盤がぐらつき、歪んだ形をした奇妙な譜面が重ねられているのが見えた。 教授が譜面を手にとると、それはまるで彼の心に闇を映し出すようだった。メロディーは激しさを増し、教授は耳元で激しく囁くような声が聞こえた。「あなたの耳は、ほんの一部分しか聞けない…」 教授は恐る恐る鍵盤に触れたその時、ピアノの旋律はより激しくなり、幽霊のような手が彼の腕を掴んだ。 それ以来、洋館からピアノの旋律は消えてしまった。残されたのは、その深い静けさの中に息づく、恐怖に満ちたオーラだけだった。