赤い目玉の井戸

深い森の奥深く、誰も立ち入ることのない場所にあった。そこには、古びた石造りの井戸がただ静かに存在していた。その井戸の水はいつも暗く濁っており、何とも言えない不気味さがあふれていた。村では、その井戸は「百目井戸」と呼ばれ、見習い巫女だけが水を汲みに来ると言われた。 誰にも目にすることのなかった幻の目。村人は皆井戸では水を引かずに井戸場に木に刻まれた観音様の呪文の札を奉ってばかりいた。昔、ある男が好奇心に駆られて立ち寄ったことがあるそうな。彼はその井戸の水を飲んでしまった。だが、その日から彼は変わってしまった。常に緊張した表情を浮かべて、人の目を避けて歩くようになった。そして、最期の瞬間、彼は天井から赤い光を見つめていた。 ある夜、少女が森に行った。彼女は、夜の静けさの中、井戸の周りで何かを見つめていた。すると、水が表面からゆっくりと渦巻き始め、光を放つようになった。その光は少女の手元へ降り注ぎ、彼女の体に触れた瞬間、意識がうろうろしてくるのを感じる。少女は驚いて逃げ出し、家に戻った。だが、次日から彼女は変わってしまった。赤い光に染まった瞳と、井戸の近くで会話を交わす姿が見られるようになった。 静まり返った森の中に響く少女の不気味な笑い声。血がついた井戸は、新たな犠牲者を待ち構えている。