幽霊の図書館

深夜、古びた図書館に一人で訪れた私は、静寂と埃っぽい香りに覆われた書架の間を歩いていた。すると、ある一エリアから異音が聞こえてきた。木製の床をたたくような、コツコツとした音がだんだんと大きくなっていった。 怖くなった私は、音のする方の書架へと近づく。そこで、小さな木のドアを見つけ、ゆっくりと開けてみた。奥には、狭く薄暗い部屋があり、そこには数十個もの古いタイプライターが並べられていた。その光景に、妙な興奮と不安が私の心を揺さぶった。 タイプライターのキーの跡が、まるで誰かが慌てて何かを書き進めているかのようだった。そして、その間から、かすかな落書きなど、不穏な気が漂っていた。私は慎重にタイプライターの列をゆっくりと歩いていくと、そのうちの一つに光が灯った。 さらに近づくと、白い光の中に小さな文字が浮かび上がっていくのを見つけた。それは、こんな風に書かれていた。""...止めました...もう...止めました...誰...誰かが...""この文章から受け取る不気味さはスリルのようなものであった。私はその部屋を後にしようとしたが、後頭部からかすかに凍えるような風が吹き抜けるのを感じた。そして、背後で誰かが口を割る人の息づかいを聞いた。 私はその瞬間、恐怖に突き動かされ、部屋から飛び出していった。図書館の他の本棚を探しても、その部屋への入り口は二度と見つからなかった。それからというもの、私は夜間に誰かを呼び泣いている声やタイプライターの音が聞こえるのではないか、常々気になるようになった。あの薄暗い部屋の記憶は、私をいつまでも幽霊の図書館と影踏み者として抱きしめるだろう。