忘れられた人形

古い民家の屋根裏部屋で、埃をかぶったまま忘れ去られた人形が一人佇んでいた。その人形は、かつては美しい少女の姿をしていたはずだが、年月が経ち、顔はぼろぼろに破れ、服は褪色し、髪の毛は抜け落ちていた。しかし、その目は、どこか不気味な光を放っていた。 ある日、引っ越ししてきた若い女性が、屋根裏部屋の片隅でその人形を見つけた。彼女は、その人形の哀愁漂う姿に心を打たれ、家に持ち帰った。 人形を家に置いた日から、奇妙なことが起こり始めた。夜になると、部屋の温度が下がり、冷たい風が吹き抜ける。そして、女性の耳元で、かすかな子供の泣き声が聞こえるようになった。 最初は、気のせいだと自分に言い聞かせたが、現象は日に日に激しくなっていった。鏡に映る自分の姿が、人形とそっくりになっていくのを感じ、恐怖に駆られた。 ある夜、女性は目が覚めると、部屋の隅に人形が立っているのを見つけた。人形は、まるで生きているかのように、ゆっくりと女性の方へ近づいてきた。その目は、女性を見つめ、不気味な笑みを浮かべているようだった。 女性は、恐怖で叫んだが、声は喉から出なかった。人形は、女性の顔に近づき、冷たい息を吹きかけた。その瞬間、女性は意識を失った。 次の日、女性はベッドで目を覚ました。部屋は静かで、人形の姿は見当たらない。しかし、女性の体は、どこか重く、動きが鈍かった。そして、彼女の顔は、人形とそっくりになっていた。 女性は、自分が人形と一体化してしまったことを悟り、絶望に打ちひしがれた。屋根裏部屋に置かれた人形は、再び静かに佇んでいた。その目は、どこか満足げな光を放っていた。