忘れられた寝室

古びた旅館の一室に引っ越してきた私には、唯一不安を感じた場所があった。それは、昔の人々が利用したのだろうか、何年も使われていないと噂される部屋だった。部屋の外からは「第三部屋」といった札がつけられ、ゆっくりと朽ちていくように見える木のドアは常時閉ざされていた。 ある夜、私は不思議な呼び声に導かれるように、第三部屋へと向かった。ドアは軽く開くばかりで、まるで私を促しているようだった。部屋の中は薄暗く埃っぽく、中央に四畳半ほどの大きさが印象的だった。そこには片付けられたような、可睡いベッドの様なものが一つだけ置かれ、カーテンが開くことで、わずかな月光が部屋に差し込んでいるではないか。 その時の私はこの部屋が秘めている何かを感じ取り、引き寄せられるように床に降りた。静寂の中、私の足音が奇妙に鳴り響く。ふと、ベッドのそばで光が移った。私の視線はその光に引き寄せられ、ベッドの下を探してみた。そこには古いオルゴールが見つかった。好奇心のまま、私はその曲を奏でるハンドルを回した。 部屋が満たされる静かで、どこか哀愁漂うメロディー。オルゴールの音が徐々に大きくなるにつれて、部屋の雰囲気が不思議なまでに変わり、恐怖に包まれた。すると、薄い影が壁に現れ、ゆっくりと僕に近づいてきた。まるで息を吸い込まれるように、影は僕を包み込むと、その中に消えていった。そして部屋は再び静寂に包まれた。 私は心臓を打ち付けながら飛び去った。それから私は二度と第三部屋には足を踏み入れたことはなかった。それでも、その怪奇なオルゴールのメロディや影が今でも私の夢の中に現れ、冷たく凍る恐怖を私に与えてくれる

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