鏡に映る微笑み

古い一軒家に引っ越してきた私は、リビングにある大きなアンティークの鏡に奇妙なこだわりを持つようになった。それは毎日、まるで私が気づかぬうちに笑顔を浮かべているように、薄気味悪い微笑みを映し出すのだ。最初は気にしなかったが、次第にその微笑みが強くなり、私を見つめるように迫ってくるような気がしてくるようになった。 ある夜、私は窓から激しい嵐を見つけていた。雷が轟き、稲妻が空を裂くような音が響く中、鏡の微笑みが激しく動いていると気がついた。恐怖に震えながら、私はその場所から目を離し、背を向けようと試みたが、鏡の微笑みが私を吸い寄せようとする力のようなものが、体を縛りつけた。 恐怖で声を上げることもできず、私は鏡の映り込む自分に気づいた。そこには、私の姿を真似ているように、激しい恐怖と狂気を帯びた笑顔の自分があった。そして、双子の瞳は、冷酷になればなるほど私の魂を見透かすように貫き通してきた。 私は気えきしながら鏡を見つめ続け、気がついたら、私の体もその笑顔に染まっていった。嵐の音も消え、静寂に包まれた部屋のなか。私と私の分身、二つの姿が同じ顔を見せながら、静かに笑い合った。