深夜のバス停での奇妙な出会い

深夜のバス停での奇妙な出会い
仕事で遅くなった夜のこと。終電を逃してしまった私は、最寄りのバス停で深夜バスを待つことにしました。そのバス停は駅から少し離れた場所にあり、周りは人影もなく、街灯がぽつんと照らすだけの薄暗い場所でした。

時刻は午前2時を過ぎており、風が冷たく、ひんやりとした空気が肌を刺しました。しばらくの間、バス停のベンチに座っていたのですが、ふとした瞬間に妙な気配を感じました。何気なく横を向くと、黒いスーツ姿の男性が、こちらをじっと見つめていたのです。

彼の顔は街灯の陰に隠れてよく見えませんが、なぜか視線が冷たく、どこか異様なものを感じました。私は目を逸らし、なるべくその男を意識しないようにしましたが、その視線は一向に外れることなく、まるでこちらを見つめ続けているかのようでした。

数分後、遠くからバスのヘッドライトが見えました。バスが近づくと、私は急いで乗り込もうとしましたが、その時、さっきの男もゆっくりと立ち上がり、私の後ろに並んできたのです。バスに乗り込むと、私は何とか男と離れた座席に座りましたが、ちらりと後ろを見ると、男も同じバスに乗り、私の方を見つめたままでした。

バスの車内には他に乗客はおらず、不気味な沈黙が続きました。車内の薄暗い照明に照らされ、男の顔が少しだけ見えましたが、その顔には何かが欠けているように見えました。目や口は確かにあるのですが、無表情で、どこか人間らしさが感じられないのです。

次のバス停に近づいたとき、私は一刻も早くこの男から離れたいと思い、バスが停まるのを待ちました。バスが停車すると、私は急いで降り、次のタクシーを拾おうとしました。しかし、バスが発車した後も、遠くからあの男がゆっくりとこちらに向かって歩いてきているのが見えました。

背筋が凍りつき、恐怖に駆られながら、私はとにかく歩き続けました。しかし、振り返るたびに、男はどこかに消えたり、また突然現れたりするのです。まるで私の周りを取り囲むように、存在しないはずの場所から現れるその姿に、現実感を失いかけていました。

やがて、私は近くのコンビニに駆け込みました。そこで少しの間、店内で震える手で水を飲み、心を落ち着かせようとしました。ですが、ふとガラス越しに外を見ると、あの男がコンビニの入り口の前に立っているのです。どうしても目を逸らすことができず、そのまま視線を合わせると、彼は突然、笑みを浮かべていることに気がつきました。

その笑顔は人間のものではなく、口が大きく裂け、歪んでいました。その瞬間、私は足を震わせながら走り出し、周りの人にも助けを求めようとしましたが、奇妙なことに誰も彼の姿に気づいていないのです。周りの人たちは普通に日常を過ごし、誰もその男の存在を認識していないように見えました。

翌日、私は会社を休み、あの男のことを友人に話しましたが、友人は「疲れで幻覚を見たのでは?」と笑って信じてくれませんでした。ですが、それからというもの、夜道を歩くと、時折あの男が私の背後に立っているような気がして、振り返ることができなくなってしまいました。

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