友人たちと山奥にキャンプへ出かけたときのこと。私たちは地図にも載っていない古びた小屋を見つけた。好奇心旺盛な友人が、「少しだけ探検してみよう」と提案し、その廃屋へ足を踏み入れることにした。
小屋はまるで時が止まったかのように荒れ果て、薄暗い室内には埃の匂いと、湿った土の冷気が漂っていた。床はきしみ、壁には古びた写真や額縁が飾られている。壁の奥には何かが隠されているような感覚があり、どこか異様な雰囲気が漂っていた。
探索を進めるうちに、友人の一人が小さな引き出しから一通の手紙を見つけた。紙は黄色く変色し、ところどころ破れている。手紙には震えた文字でこう書かれていた。
「これを読んでいるなら、お願いです。助けてください。ここに閉じ込められ、出られません。逃げようとすると、"あれ"が現れて…」
不気味な文面に私たちは凍りついた。さらに読み進めると、手紙には書き手が次第に追い詰められていく様子がつづられていた。
「夜になると、あれが近づいてきます。壁の隙間からこちらをじっと見つめる無数の目、手が…助けて…逃げられない…誰か、早く…」
手紙が途切れている場所には、何かがしみ込んで黒くなっていた。恐怖に駆られた私たちはその場を離れようとしたが、ふと、友人が壁の一部を触って凹む感触に気がついた。壁紙を剥がすと、そこには無数の手形が刻まれていた。小さな子供の手形から大人のものまで、壁一面に無数の手が刻まれている。
急いで外に飛び出した私たちは、廃屋から離れるために山道を駆け下りた。しかし、しばらく進むと、まるで誰かが後ろからじっと見つめているような気配がした。振り返ると、山道の奥で小屋の窓からこちらを見ている影が見えた気がした。
その影はじっと、私たちが離れていくのを見つめていた。それ以来、あの小屋には近づく気にはなれない。