夜も更けた頃、静かな部屋で眠っていた私は、突然の電話の音で目を覚ました。時計を見ると午前2時、こんな時間にかかってくる電話はいつも不吉だ。着信番号は見知らぬものだったが、無視するのも気味が悪く、私は恐る恐る電話を取った。
しばらく無音が続いた後、かすかに誰かの息遣いが聞こえる。気味悪さを感じつつも、私はもう一度尋ねた。
耳を疑った。声は聞き覚えのないもので、かすれて震えていたが、どこか私に何かを伝えようとしているようだった。
しかしその問いには答えず、相手は一言だけを繰り返す。
電話口からはすすり泣くような音も混じり、何かが苦しそうに聞こえる。寒気が背中を駆け上がるのを感じたが、ふと気づいたことがあった。声の雰囲気がどこか懐かしい。思い出すと、その声は10年以上前に他界した私の友人のものによく似ているのだ。
思わず声を震わせて聞き返した。すると、電話の向こうで短い沈黙があった後、その声がはっきりと答えた。
「そうだよ…でも、ここがどこか分からない…暗いんだ…一人なんだ…」
耳を疑ったが、次の瞬間、電話の奥で彼がいる場所の環境音が少しだけ聞こえた。木の葉が擦れるような音、そして風の音。それはまるで、墓地の近くにいるような音だった。
彼の声がだんだんと遠ざかっていくのが分かった。その瞬間、電話が切れ、部屋には再び静寂が訪れた。
数日後、私は友人の墓を訪ねてみた。墓石に手を合わせると、風が吹き、どこか懐かしい声が聞こえた気がした。それ以来、深夜の電話にはどうしても出る気にはなれない。