夜中にかかってきた電話

夜中にかかってきた電話
夜も更けた頃、静かな部屋で眠っていた私は、突然の電話の音で目を覚ました。時計を見ると午前2時、こんな時間にかかってくる電話はいつも不吉だ。着信番号は見知らぬものだったが、無視するのも気味が悪く、私は恐る恐る電話を取った。

「…もしもし?」

しばらく無音が続いた後、かすかに誰かの息遣いが聞こえる。気味悪さを感じつつも、私はもう一度尋ねた。

「…もしもし?誰かいますか?」

数秒の沈黙の後、低いかすれた声がようやく答えた。

「…助けて…」

耳を疑った。声は聞き覚えのないもので、かすれて震えていたが、どこか私に何かを伝えようとしているようだった。

「誰ですか?どうしたんですか?」

しかしその問いには答えず、相手は一言だけを繰り返す。

「ここ…暗い…助けて…」

電話口からはすすり泣くような音も混じり、何かが苦しそうに聞こえる。寒気が背中を駆け上がるのを感じたが、ふと気づいたことがあった。声の雰囲気がどこか懐かしい。思い出すと、その声は10年以上前に他界した私の友人のものによく似ているのだ。

「…もしかして、○○?」

思わず声を震わせて聞き返した。すると、電話の向こうで短い沈黙があった後、その声がはっきりと答えた。

「そうだよ…でも、ここがどこか分からない…暗いんだ…一人なんだ…」

耳を疑ったが、次の瞬間、電話の奥で彼がいる場所の環境音が少しだけ聞こえた。木の葉が擦れるような音、そして風の音。それはまるで、墓地の近くにいるような音だった。

「…君は…どこにいるの?」

私が問いかけると、電話の奥で彼は再びすすり泣く。

「もう…行けないのかな…外に出たいんだ…」

彼の声がだんだんと遠ざかっていくのが分かった。その瞬間、電話が切れ、部屋には再び静寂が訪れた。

数日後、私は友人の墓を訪ねてみた。墓石に手を合わせると、風が吹き、どこか懐かしい声が聞こえた気がした。それ以来、深夜の電話にはどうしても出る気にはなれない。

シェアする!

1人が怖い!と言っています

コメント