田舎に住む学生の洋介(ようすけ)は、友人たちと肝試しに行くことになりました。場所は地元で「二度と戻れない道」と呼ばれる古い林道。噂では、その道の先には昔、村の住民が何かを祀っていた祠(ほこら)があるが、近づいてはいけないと言われていました。理由は、何人もそこで行方不明になったということです。
その夜、洋介と友人たちは懐中電灯を持ってその道に足を踏み入れました。道は静寂に包まれていて、かすかに木々がざわめく音が聞こえるだけ。数分進むと、一緒にいた友人の一人が「誰かが囁いてる…」と呟きました。しかし、他の人には何も聞こえません。
さらに進むと、後ろから「帰れ…帰れ…」という小さな声が聞こえてきました。最初は誰かのいたずらだと思い振り返りましたが、誰もいない。友人たちも恐怖で震え始め、早く戻ろうと引き返すことにしました。
ですが、来た道を戻っているはずなのに、いつまでも同じ場所を歩いているように感じます。道がねじれているかのように何度も同じ木や石が目に入るのです。さらに声は「帰さない…帰さない…」と低く響き渡り、まるで耳元で囁かれているようでした。
焦りと恐怖で混乱していると、突然、洋介の耳元に冷たい息を感じる声が聞こえました。「一度入った者は二度と戻れない…」その瞬間、彼の視界は暗転し、最後に見たのは友人たちが驚愕の表情で彼を見つめている姿でした。
翌朝、村人が林道で洋介の友人たちを発見しましたが、洋介だけはどこにもいませんでした。道の途中に祠があり、その奥からかすかに「帰れ…帰れ…」という囁きが聞こえたといいますが、誰も二度とその道には近づきませんでした。