佐藤奈美(さとう なみ)は仕事が忙しく、プライベートな時間もなかなか取れない日々を送っていました。そんなある日、彼女の元に一通の手紙が届きました。差出人の名前も住所もなく、封筒は古びており、どこか不気味な雰囲気が漂っていました。封を開けると、手書きの文字で「ご招待いたします。午前0時に『赤い扉の家』へお越しください」とだけ書かれていました。
最初は無視しようと思った奈美ですが、なぜかその手紙の内容が頭から離れませんでした。「赤い扉の家」とは一体どこなのか、誰が送ってきたのか。そんな疑問が心をざわつかせ、彼女は好奇心に勝てず、午前0時にその場所を探しに行く決意をしました。
夜、指定の時間に奈美は地図を頼りに街外れの廃墟にたどり着きました。朽ちた壁に覆われた家の正面に、唯一目立つ赤い扉がありました。胸の鼓動が高鳴るのを感じながら、奈美はその扉をゆっくりと開けました。
中は真っ暗で、奥には長い廊下が続いています。恐る恐る進んでいくと、奥の部屋から低い囁き声が聞こえてきました。「待っていた…待っていた…」その声に引き寄せられるように、奈美は無意識のうちに足を進めていました。
廊下の奥にたどり着くと、そこには古い鏡が立てかけられており、鏡の中には奈美の姿が映っていました。ですが、何かが違う…鏡に映った彼女の顔が、ゆっくりと笑みを浮かべ、口を動かし始めました。
「次の招待者が来るまで、ここで待っているんだよ。」鏡の中の奈美が、彼女にそう囁きました。瞬間、奈美の身体が動かなくなり、鏡の中に引きずり込まれる感覚に襲われました。奈美の視界は暗転し、最後に感じたのは、自分の口が勝手に動いている不気味な感覚だけでした。
翌朝、奈美の友人が彼女の家を訪れましたが、奈美は姿を消していました。そして数日後、その友人の元にも同じような古びた招待状が届いたという話が広がり始めたのです…。