第1章:謎の招待状
大学生の沙織(さおり)は、ある日、自宅の郵便受けに一通の手紙が届いているのに気付きました。差出人も、宛名もない不気味な封筒には、古いインクで「深夜0時、山奥の廃病院にて」とだけ書かれています。普段から怖い話や心霊スポットが好きな沙織でしたが、今回は少しばかり不安が頭をよぎりました。それでも彼女の好奇心はそれを上回り、結局、手紙の内容を詳しく調べ始めます。
沙織の頭には、噂で耳にしていた「呪われた廃病院」が浮かんでいました。地元でも有名なその病院は、30年前に閉鎖され、今では山奥にひっそりと存在しています。昔、患者が次々と行方不明になったという事件が起こり、以後、村人たちはその場所に近づくことを避けてきたのです。
夜、沙織はこの話を大学の友人たちに打ち明けました。
「これ、行ってみたくない?」沙織は興奮した声で話し始めましたが、友人たちは不安げな表情を浮かべました。
「いや、沙織、さすがにそれはヤバいって…。廃病院って、誰も入ろうとしない場所だよ。」一人の友人が真剣に忠告します。
「でも、ただの噂じゃない?それに、みんなで行けば怖くないでしょ?」沙織は半ば強引に説得しようとしましたが、友人の反応は鈍いものでした。
しかし、彼女の情熱に押され、最終的に数人の友人が同行を決意。彼らは懐中電灯やカメラを用意し、深夜0時にその廃病院を目指すことになったのです。だが、その行動が恐ろしい運命の始まりであることなど、誰も気づいていませんでした。
夜更け、車で山奥へと向かう途中、あたりは徐々に霧が立ち込め、辺り一帯が暗闇に包まれていきます。道も徐々に荒れてきて、誰もが息を潜めて車内を見つめる中、沙織だけが期待に満ちた表情で病院への距離を縮めていました。
「もう少しだよ、みんな!」沙織が前方を指差し、姿を現したのは、かつて診療所だったと思われる建物。窓はすべて割れ、雑草が生い茂り、何かを待っているかのように立ちはだかっています。全員がその異様な空気に飲まれる中、沙織は先陣を切ってその廃病院の門をくぐりました。
入った瞬間、彼らの背後で風が強く吹き抜け、まるで何者かが門を閉ざそうとしているかのような音が響き渡ります。全員が振り返りますが、門は閉まってはいません。ただ、妙に冷たい風が彼らを包み込み、明らかな異変を感じさせました。
「やっぱり…帰ったほうがいいんじゃないか?」一人の友人が声を震わせながら言いましたが、沙織は笑顔で言います。
「怖いの?大丈夫だよ、みんなで来たんだし!」そう言って沙織は一歩踏み出しましたが、その一歩が彼女たちを恐怖の世界へと引き込む始まりだったのです。