廃病院の秘密 第3章:迷い込んだ世界

廃病院の秘密
第3章:迷い込んだ世界

第3章:迷い込んだ世界


沙織たちは、廊下を駆け抜けて元の出口に戻ろうとしましたが、どれだけ進んでも見覚えのある場所にたどり着けませんでした。廃病院の中は、まるで迷路のように変化し続けているかのようです。壁には奇妙な模様が浮かび上がり、遠くから不気味な囁き声が聞こえてきます。

「これ、どうなってるの?こんなの現実じゃない!」翔が息を切らせながら叫びます。

「落ち着いて!一緒にいれば大丈夫だから!」沙織は冷静を装っていましたが、心の中では恐怖が膨らんでいました。暗闇の中を進む彼らの懐中電灯の光は、か細く揺らぎ、まるで何かに飲み込まれてしまうようでした。

やがて、一行は病室の一つに入り込みました。その部屋は他と違い、比較的きれいで、誰かが最近まで使っていたかのように整頓されていました。ベッドの上には薄い毛布がかかり、机の上には古い日記が置かれています。

「これ、何だろう?」沙織は日記を手に取り、ページをめくりました。

日記には、かつてこの病院で働いていた医師の記録が書かれていました。しかし、その内容は次第に奇怪なものになっていきます。


「2023年3月12日 今日、新しい患者が来た。彼は幻覚を見ているようで、自分が“何かに追われている”と言い続けている。治療を試みたが、彼の恐怖心はますます強くなるばかりだ。」

「2023年3月20日 患者が夜中に姿を消した。どこを探しても見つからない。代わりに、病院中で“足音”が聞こえるという職員の声が相次いでいる。何かがこの病院に入り込んでいるのか?」

「2023年3月25日 足音はどんどん頻繁になり、患者も職員も次々と消えていく。私も眠るのが怖い。何かが私を見張っている気がする。」


「これ…本当の話なのかな?」健二が震える声で尋ねます。

「さぁ、でも…この足音って、さっきの…」沙織が言いかけた瞬間、背後の廊下で「コツ…コツ…」と例の足音が再び聞こえ始めました。それは徐々に近づいてきます。

「ここにいても危ない、行こう!」翔が叫び、一行は再び部屋を飛び出しました。しかし、どこへ行っても出口は見つからず、代わりに聞こえる足音は、まるで彼らを追い詰めるように響いてきます。

やがて、沙織たちはとある大きな手術室にたどり着きました。部屋の中央には巨大な手術台があり、そこに不自然なほど白い布がかけられています。何かがその下にいるように見えました。

「見てみるのか…?」健二が声を震わせながら尋ねましたが、沙織は息を飲み、ゆっくりとその布に手を伸ばしました。布をめくると、そこには何もない、空っぽの手術台がありました。しかし、次の瞬間、部屋全体が不気味な赤い光に包まれ、壁に奇怪な影が浮かび上がります。

その影は、まるで異形の怪物が手術台を囲むような形をしていました。沙織たちは叫び声を上げ、再び廊下に飛び出しました。どこに向かっているのかわからないまま、ただ走り続けます。

そして、不意に沙織たちは行き止まりにぶつかりました。振り返ると、そこには暗闇の中から異様に長い腕が伸びてきて、彼らに向かってゆっくりと迫ってきていました…。

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