第4章:囚われの真実
沙織たちは背後から迫る長い腕を必死で振り切ろうとしました。しかし、暗闇の中で出口もわからず、ただ混乱と恐怖の中で走り続けました。腕の動きは徐々に速くなり、まるで彼らの恐怖を楽しむかのように、彼らを追い詰めてきます。
突然、翔が見覚えのない扉を見つけ、咄嗟にそれを開け放ちました。「早く入れ!」という彼の叫び声に導かれるように、沙織と健二も駆け込みました。扉を閉めた途端、音は止まり、静寂が訪れました。しかし、彼らはすぐに気づきます。その部屋は、ただの避難所ではなかったのです。
部屋の中央には大きなモニターが設置されており、その周りには古びた医療機器が無数に並んでいました。モニターには何かが映っており、よく見ると、それは廃病院の各部屋の様子を映し出している防犯カメラの映像でした。
「これ…誰が監視してたんだ?」健二が呟きます。
モニターの一つには、奇妙にゆがんだ人影が映っていました。その影は画面の中で動き回り、やがて彼らが今いる部屋の扉の前に現れました。
「これ、ここだ!」翔が叫び、慌てて扉を押さえましたが、扉の向こうからはゴンゴンと激しい音が響いてきます。
「出られない…!これじゃ、私たち…」沙織が泣きそうな声を上げたとき、モニターに新たな映像が映し出されました。それは先ほど沙織が拾った日記の持ち主と思われる医師の姿でした。
映像の中で、医師は不安げな顔をしてカメラに語りかけています。
「この記録を見ている者がいるなら、君たちも病院に囚われたのだろう。この場所はもはや現実のものではない。何かが病院を飲み込み、歪めている。私はそれを“影の主”と呼んでいる。」
医師の言葉は続きます。
「影の主は、人の恐怖を糧にして成長する。ここから逃れる方法は一つ、病院の中心にある手術室の奥にある“真実の扉”を開くことだ。ただし、それには自分の最も恐れているものと向き合わなければならない。」
モニターが突然消え、部屋全体が再び暗闇に包まれました。沙織たちはお互いに目を見合わせます。どこに向かうべきか迷う中、扉の叩く音が止まり、代わりに低い囁き声が聞こえてきました。
「真実の扉って、手術室の奥にあるってことだよね?」健二が怯えながら言います。
「そうみたいだ。でもその前に“最も恐れているもの”と向き合うって…何だろう?」沙織は不安げに呟きました。
彼らは扉を開け、再び廊下へと足を踏み出しました。手術室を目指して進む中、廊下の風景が一変し、壁には彼らの過去の記憶と思われる映像が映し出されます。それは、沙織の幼い頃の恐ろしい体験や、翔が隠していた秘密、健二が避け続けてきた後悔…。彼らはそれぞれの恐怖と向き合わざるを得なくなります。
「これが…私たちの試練なの?」沙織は呟きながら、震える手で壁に触れました。その瞬間、廊下全体が光に包まれ、彼らの次の試練が始まろうとしていました。