最終章:終焉の夜
廃病院の深部、謎の部屋で発見された異様な光景――それは、失踪した者たちの行方を暗示する恐るべき秘密を物語っていた。沙織と涼介は互いに目を見交わし、覚悟を決めてその部屋の扉を押し開けた。
真実の部屋
部屋の中には壁一面に貼られた古びた写真があった。どれも、この病院で行われていた「治療」と称した実験の記録だった。被験者たちは無表情で、しかしその瞳には深い怨嗟の色が宿っている。
涼介がその一枚に目を止めた。「これ……俺の叔父だ」
沙織は驚いて振り返った。涼介がここに来た理由が明らかになった瞬間だった。「叔父はこの病院で姿を消した。みんな事故だと言っていたけど、これは……」
写真を追っていくうちに、二人はある一枚の写真の下に隠されたノートを見つけた。それはこの病院での「治療計画」の詳細が記されたものだった。
怨霊の目覚め
ノートを手にした瞬間、部屋全体が震え始めた。天井から滴る水音が突然耳をつんざくように響き渡り、空気が急に冷たくなった。
沙織は振り向きざまに叫んだ。「涼介、ここを出ないと!」
しかし、ドアが激しく閉まり、どこからか囁き声が聞こえ始めた。それは失踪した患者たちの声だった。
怨霊たちが形をなして現れ始めた。かつての被験者たちが、憤怒と悲しみに満ちた姿で二人を見下ろしている。
最後の選択
涼介はノートを燃やそうとした。「これを消せば、彼らも解放されるかもしれない!」
沙織はそれを阻止しようと叫ぶ。「でも、それじゃあ真実は永遠に埋もれてしまう!」
二人は決断を迫られた。最終的に涼介はノートを抱え、沙織を見つめた。「俺がここに残る。お前は逃げろ」
「そんなの嫌!」沙織は涙を流しながら叫んだが、涼介の意思は揺るがなかった。
新たな伝説
朝日が差し込むころ、沙織は一人で廃病院を後にした。振り返ると、病院は静けさの中に包まれていたが、どこかで涼介の囁き声が聞こえた気がした。
数年後、沙織は廃病院の秘密を公表し、多くの謎が解明された。しかし、涼介の行方だけは誰にもわからなかった。
人々はこう噂するようになった――「あの病院には、真実を守る男の霊がいる」と。