町外れにある古びた中学校。その学校には、かつて校舎の一部が火事で焼け落ちたという過去があり、それにまつわる「七不思議」が語り継がれていた。七不思議のうち六つはよく知られているが、最後の一つだけは誰も知らないという。その謎が解き明かされることはなく、「七不思議」ではなく「六不思議」と呼ばれるようになった。
主人公の春菜は、放課後に友人の拓也と一緒に七不思議の秘密を調べることにした。二人は好奇心と少しの恐怖を抱えながら、人気のない校舎を探検し始めた。
第一の不思議:動く人体模型
理科室に置かれた人体模型が、夜になると勝手に動き回るという噂。春菜たちが部屋に入ると、薄暗い蛍光灯の下で人体模型が静かに立っていた。
「これが動くって話だけど……本当かな?」拓也が近づきながら模型の顔を覗き込んだ。
その瞬間、模型の腕がギシギシと音を立てて持ち上がり、拓也の肩に置かれた。驚いて後ずさる二人。その背後で誰かの気配を感じたが、振り向いても誰もいなかった。
第二の不思議:響くピアノの音
次に向かった音楽室では、誰もいないはずなのにピアノの音が響いていた。春菜が恐る恐る部屋を覗くと、薄暗い中で鍵盤が一人でに動いているのが見えた。
「これって誰かのイタズラじゃない?」拓也が呟いた瞬間、ピアノの音が止まり、部屋全体が静寂に包まれた。二人がそっと後退すると、鍵盤が激しく叩かれ始め、音楽室全体が不気味な旋律に包まれた。
第三の不思議:トイレの四番目の個室
学校の古いトイレには、「四番目の個室に入ってはいけない」という言い伝えがあった。二人はその場所を確かめようと足を踏み入れたが、四番目の扉は硬く閉ざされていた。
拓也が力を込めて押し開けると、真っ暗な個室の中に赤黒い文字で「逃げろ」と書かれていた。そして、廊下から足音が近づいてくる気配がした。
七つ目の不思議
残りの三つの不思議も順調に確認した二人は、ついに七つ目の秘密に迫った。それは「旧校舎の最上階に入った者は戻れない」というものだった。
二人は恐る恐る旧校舎に向かった。最上階にたどり着くと、そこには大きな鏡が一つ置かれていた。その鏡には二人の姿が映っていたが、何かがおかしい。鏡の中の自分たちが、勝手に動き始めたのだ。
突然、鏡が光り輝き、二人は吸い込まれるように中へと引き込まれた。鏡の中には無数の影が漂い、怨念のような声が響いていた。
「これが……七つ目の不思議?」春菜の声はかき消され、闇の中へ消えていった。
翌朝
次の日、二人の姿は校舎から消えていた。後日、学校の鏡は全て撤去され、七不思議の噂は永遠に封印された。
しかし、廊下の隅で鏡に映った二人の影を見たという証言が後を絶たないという。