7歳の涼子は、田舎の静かな村で暮らしていた。両親は共働きで、彼女は放課後になると一人で家に帰ることが多かった。帰り道は畑や森に囲まれた細い道を通る。彼女の足元には、いつもお気に入りの赤い靴が映える。
ある日の帰り道、涼子は森の中で見知らぬ子供と出会った。その子供は彼女と同じ年頃で、真っ白な服を着ていた。彼は無邪気に話しかけてきたが、どこか不思議な雰囲気があった。
「赤い靴、かわいいね。どこで買ったの?」
涼子は微笑んで答えたが、彼の目がずっと靴に注がれていることに気付くと、少し不安になった。
その日以来、涼子は放課後の帰り道で何度もその子供と会うようになった。しかし、学校の友達にその話をすると、誰もその子供を知らなかった。彼の存在は、彼女の中で次第に不安を呼び起こした。
ある日、涼子が帰宅すると、家の玄関の前に赤い足跡が続いていることに気付いた。自分の靴が汚れているのかと思ったが、靴には何の汚れもない。
さらに奇妙なことに、家の中で母親が涼子を見て一言。「涼子、今日は誰かと遊んでたの?服が汚れてるじゃない。」彼女は自分の服を見て驚いた。泥のようなものが付着しており、まるで誰かに強く掴まれたかのような跡があった。
その夜、涼子はベッドで目を覚ました。窓の外から小さな囁き声が聞こえる。それはあの子供の声だった。彼女の名前を繰り返し呼びながら、低い声でこう言った。
涼子は布団を頭まで被り、声が消えるのを待った。翌朝、恐る恐る窓の外を見ると、赤い靴が庭に置かれていた。だが、それは涼子の靴ではなく、血のように濡れている見知らぬ靴だった。
次の日、涼子は学校の帰り道で道に迷った。いつも通っているはずの森の道が、全く知らない景色に変わっていた。彼女は泣きそうになりながら歩き続け、ふと気付くとあの子供が立っていた。
「こっちだよ、涼子ちゃん。家に帰れる道を教えてあげる。」
彼の言葉に従うしかなかった。だが彼が案内した先は、古い井戸だった。井戸の底を指差しながら彼は微笑む。
翌日、涼子の両親は娘が帰ってこないことに気付き、村中で探した。しかし涼子は見つからなかった。彼女の赤い靴だけが井戸の近くで発見されたという。
そして村では奇妙な噂が広まった。その井戸には、昔、赤い靴を履いた子供が落ちて亡くなったというのだ。その子供は、今でも他の子供たちを井戸の底へ引きずり込むという…。