封鎖された12号室

封鎖された12号室
探偵の山岸健一は、地元で小さな探偵事務所を営んでいる。ある日、町外れにある古びたアパートの管理人から依頼を受けた。

「12号室に住んでいた住人が突然行方不明になったんです。でも、それだけじゃない。ここ数年、12号室に入居した人は皆、必ず消えてしまうんです。」

管理人は怯えた様子で語った。12号室は他の部屋と何ら変わりないように見えるが、誰も長く住み着けないらしい。山岸は興味をそそられ、調査を引き受けることにした。

管理人から渡された鍵を受け取り、12号室に入ると、薄暗い室内はほこりにまみれていた。家具はそのまま残されており、最後の住人が突然姿を消したことが伺える。

机の上には古びた日記が置かれていた。それは数代前の住人が残したものだった。

「この部屋に入ってから、誰かが見ている気がする。夜になると天井から囁き声が聞こえる…」

さらにページをめくると、「鏡を見てはいけない」と書かれたページで日記は途切れていた。

山岸は日記の内容に少しの恐怖を覚えつつ、部屋をくまなく調べることにした。

その夜、山岸は12号室に泊まり込むことにした。部屋は不気味な静けさに包まれ、時折、壁の向こうからかすかな音が聞こえる。

深夜になると、異様な寒気が部屋を満たし始めた。そして、天井から微かな囁き声が聞こえる。それは一つの言葉を繰り返していた。

「鏡…鏡を見ろ…」

山岸は部屋に置かれた古びた鏡を見ないように意識しながら、手持ちの懐中電灯で調査を続けた。その時、ふと鏡に映る自分以外の影に気付いた。そこに立っていたのは、目を見開いたまま静かに山岸を見つめる白い顔の女だった。

山岸は全身に鳥肌を感じ、鏡から目を離した。だが、その瞬間、鏡の表面にヒビが入り、中から黒い手が伸びてきた。慌てて鏡を床に叩きつけて割ると、部屋の空気が一瞬で変わった。

鏡の裏側には古い札が貼られており、それが破れかけていた。札には「封印」の文字が書かれており、何かを閉じ込めていたことを示していた。

山岸はこれ以上この部屋にいるべきではないと判断し、すぐに管理人に連絡した。しかし、電話が繋がらない。部屋を出ようとすると、ドアが固く閉ざされ、どれだけ力を入れても開かない。

山岸が閉じ込められたまま迎えた夜明け、部屋の壁には住人たちの名前が刻まれていることに気付いた。それらは全て、この部屋で姿を消した人々の名前だった。そして、最後の名前として「山岸健一」の文字が浮かび上がった。

その後、山岸は二度と外に出ることはなかった。12号室は再び封鎖されるが、噂は消えない。新たな管理人が現れるたびに、この部屋の存在が人々の記憶をよぎる。

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