高校生の彩花は、ある日、クラスメートの玲奈から不気味な噂を聞いた。それは「赤い封筒」に関するものだった。その封筒は、開けた者に必ず不幸が訪れるという。しかも封筒は、開けた人の手元に留まることなく、数日後には次のターゲットの元へと届くらしい。
「封筒を受け取った人は絶対に開けちゃダメって言われてるんだよ。でもさ、どうしても気になって開けちゃう人がいるみたい。」
玲奈の話を聞きながら、彩花は苦笑いを浮かべた。迷信だと信じていなかったからだ。
数日後、学校の帰り道、彩花の家の郵便受けにそれは届いた。真っ赤な封筒で、宛名も差出人も何も書かれていない。ただ、それを手に取ると、微かに金属のような冷たい感触が指先を刺した。
封筒を持って部屋に戻った彩花は、そのまま机の上に置いた。開ける気はなかったが、なぜか目を離すことができない。赤い封筒は存在感を増していくようで、部屋全体がその色に染まるような錯覚さえ覚えた。
夜が更けると、彩花は夢を見た。夢の中では、誰かのすすり泣きが聞こえてきた。薄暗い部屋の中で、目の前には赤い封筒が浮かんでいる。開けようと手を伸ばした瞬間、背後から冷たい手が彼女の肩を掴んだ。
その声と同時に目が覚めた彩花は、汗びっしょりになっていた。夢の内容を思い出すと同時に、机の上に置いてあった封筒が消えていることに気づいた。部屋を探し回ったが見つからない。その夜、彩花は不安な気持ちで眠りについた。
翌朝、学校で玲奈が休んでいると聞かされた。クラスメートによれば、玲奈の家族が突然の事故で亡くなり、彼女は失意の中にいるという。胸騒ぎを覚えた彩花が玲奈の家を訪れると、玲奈の部屋には赤い封筒が置かれていた。
玲奈は震える声でそう告げた。彼女の目の下には深い隈ができており、何日も眠れていないようだった。封筒の中には何も入っていなかったが、それでも開けたことが呪いを呼び寄せたのだと玲奈は信じていた。
その後、玲奈は行方不明になった。警察の捜索にもかかわらず、彼女の姿は見つからない。彩花は恐怖に駆られ、自分の身にも同じことが起こるのではないかと怯え続けた。
ある夜、彩花の部屋に再び赤い封筒が現れた。今度は確実に誰かが置いていったとしか思えない状況だった。彩花は震える手でそれを持ち、窓から外に投げ捨てた。しかし、その封筒は翌朝、また机の上に戻っていた。
耳元で囁く声に彩花は戦慄した。そして彼女は封筒をじっと見つめ、覚悟を決めたようにそれを開けた。
封筒の中には、彼女の名前が書かれた紙が入っていた。そしてその瞬間から、彩花の周囲で不可解な事故が相次ぎ、次第に彼女の存在すら周りから忘れられていった。
最後に残されたのは、赤い封筒とその中の名前だけだった。